歯のコラム column
このままでは歯が残っても、高齢になった時にご飯がおいしくたべられないかも ~口の発達機能からみたお話~
2024.08.21
口腔外科仙台市若林区のほんま歯科院長の本間です。
先日学校検診に行ってきました。本当に今の子どもたちは虫歯が少なくなっております。
しかしながら虫歯が目立たなくなってきた分、それ以外の問題が目立つようになってきました。
たとえば、顎関節症や歯並びや口腔機能に関わる悪い癖の問題です。
私は日本学校歯科医会に所属しているのですが、先日、日本学校歯科医会より、「口腔機能発達不全への対応」という資料が初めて発行されました。
実は同会の大規模調査において、未就学児の保護者の半数近くが子供の食に関して心配事を抱えていることがわかりました。
【心配事のべスト3】
① 偏食
② 食べるのに時間がかかる
③ むら食い
この中で我々歯科が関わることとして、②の「食べるのに時間がかかる」が挙げられます。
正常なお口の機能が獲得できないと食べるのに時間がかかるようになります。
食事をするにあたり次の3段階があります。
① 捕食 食べ物を口にいれること
② 咀嚼 食べ物をかむこと
③ 嚥下 食べ物を飲み込むこと
この3つの機能のうち、1つでも劣っていると十分に食事をすることはできません。
その結果、食べるのに時間がかかるようになってしまうのです。
各項目についてうまくいかないとどんな症状がでるか、そしてその対応方法や指導方法についてお話したいと思います。
捕食 (食べ物を口にいれること)
症状として
・食べ物をこぼす
・うまく取り込めない
・口の奥に食べ物をいれこむ
・口唇を上手に閉じられない
対応と指導方法
・上下の口唇で食べ物をしっかり挟んで取り込む
・口の前方部でまず食べ物を取り込む
・唇を閉じる力が弱く食べ物を挟み込むことができなかったり、こぼしたりする場合は、唇の筋肉が弱いので歯科医院に相談してトレーニングを行う
(当院ではあいうべ体操やリップルくん、お口の筋肉体操などを指導しています)
咀嚼 (食べ物をかむこと)
症状として
・上手に噛めない
・頬の内側に食べ物がのこる
・食べ物を唾液と混ぜることが上手にできない
対応と指導方法
・大きな虫歯があって良く噛めないかもしれないので、まずお口の中を調べてください。そして虫歯がある場合は歯科医院に受診してください
・乳幼児の場合、歯がどのくらい生えているか確認し、その生え具合にあった食形態にする。この時に注意しないといけないのが月齢ではなくあくまで歯の生え方で食形態を変えることです。詳細は医院で説明します。
・良く噛んで唾液分泌をしっかりさせる。噛まないで水で流し込む食べ方はしないでください。コップは食卓にはおかないようにしましょう。
・口を閉じて食べるようにする
嚥下 食べ物を飲み込むこと
症状として
・むせる
・舌をつきだしながら飲み込んでいる
・こぼす
対応と指導方法
・舌の先を上あごに押し付けながら飲み込む
・口を閉じて飲み込む
・飲み込むときに舌をつきだしながら飲み込んだり、口を閉じて食べることができなくクチャクチャ音がする場合は歯科医院にご相談ください。
現在の食生活はいろいろ便利なものがでて、食べることだけに着目すれば困らなくなりました。
その代わり、本来学ぶべき機能を獲得しないまま大きくなる子供たちが増えています。
物をたべたり飲み込んだりすることはだれかに教わるわけではなく、自然に獲得できるものなのです。
しかし、実はその動作をするにあたり乳児なら、おっぱいを飲むときに、顔を真っ赤にするぐらい舌を乳首に押し付けて飲むことで舌の筋肉を鍛え、乳首を加えることで口唇の筋肉を鍛えます。
離乳食の時には、親がスプーンで食べ物を食べさせるときに、口の中にスプーンを入れてしまうのではなく、口元でスプーンをとめて、乳児が自ら口を開けてパックとスプーン挟み込んで食べ物をこじりとる動作をすることで、唇の力を鍛えます。
食事も1口大より大きくすることで、かじり取る力や動作を覚えたり、適切な歯の生え方にあった食事形態にすることで、正しい飲み込み方を覚えたりするのです。
もし正しい機能が獲得できないまま大人になり、老人になった時には、たとえ歯が残っていても食べ物を捕食したり噛んだり飲み込んだりする機能がかなり早く老人化するため、食事を楽しむことができなくなってしまうかもしれません。
ぜひそうならないようにするために、乳児からお口の正しい機能を身につけましょう。