歯のコラム column
~キシリトール~
2022.09.21
未指定こんにちは。トリートメントコーディネーターの片岡です。
今回は歯医者さんでよく耳にするキシリトールのついてお話しします。
キシリトールは、ソルビトールやマルチトールと同じ糖アルコール という甘味炭水化物の仲間です。
自然界では多くの果実や野菜に含まれています。
例えば、イチゴには乾燥重量100g中に約300mgのキシリトールが 含まれています。
また、人の肝臓でも、1日当たり約15gのキシリトールが作られています。
私達がガムやタブレットなどのお菓子の形で口にするキシリトールは、白樺や樫などの木から抽出されるキシランヘミセルロースを原料にして、工業的に作られています。
自然界にあるキシリトールも、工業的に作られたものも、同じ分子式(C5H12O5)ですので、両者に差はありません。
キシリトールは、日本では平成9年(1997年)4月に食品添加物として認可されました。
しかし、それ以前から10年以上輸液に含まれる糖質として使用されており人体にも安全であることが知られています。
また、米国では、その安全性から「1日にどれだけ摂取しても良い食品」として扱われています。
砂糖と同じ甘さをもつキシリトール
キシリトールは、糖アルコールの中で最も甘く、砂糖と同じ甘味度を 持っています。
キシリトールは溶ける時に熱を奪うので、口に含むとスーッとした冷たい感覚があります。
そのため、ミントの味によく合うことから、キシリトールを使った お菓子には、ミント味が多く見られます。
また、果物の味をより新鮮にする効果や、苦味を消す効果もあります。
さらに、冷却効果があることから、布地に応用した夏用の肌着や寝具、 そして化粧品も市場に出ています。
虫歯にならない甘味料
キシリトールを始めとする糖アルコールはむし歯の原因になりません。
糖アルコールからは、口の中で歯を溶かすほどの酸は作られないからです。
ソルビトールやマルチトールからは、少量ですが歯垢(プラーク)中 で酸ができますが、キシリトールからは酸は全くできません。
また、キシリトールの方が甘みが強いのでその甘味により唾液も出やすくなります。
酸を作らないこと、唾液の分泌を刺激して酸を中和することが、キシリトールがむし歯の原因にならない理由です。
虫歯を防ぐ甘味料
キシリトールには、「むし歯の発生や進行を防ぐ」という、他の糖アルコールにはない特徴的な効果があります。
キシリトールをガムやタブレットの形で一定期間以上口の中に入れると、むし歯の原因となる歯垢が付きにくくなるだけでなく歯の再石灰化を促し歯を固くします。
さらにキシリトールには、むし歯の大きな原因であるミュータンス菌の活動を弱める働きも持っています。
このような働きは、他の甘味料には見られない、キシリトールだけの効果です。
なぜ?キシリトールはむし歯を防ぐの?
キシリトールがむし歯を防ぐ理由は大きく二つに分けることができます。
一つは、キシリトールだけでなく他の糖アルコールも持つ唾液分泌の 促進と再石灰化作用であり
もう一つはキシリトールだけが持つ酸を作らないことと、歯垢中の酸の中和促進ミュータンス菌の代謝の阻害です。
唾液分泌の促進と再石灰化作用では糖アルコールには甘みがあるため 口腔内に入れると味覚を刺激し唾液分泌を促進します。また、ガムとして噛んだ場合には、咀嚼(そしゃく)により唾液分泌も促進されます。
ただし、唾液分泌が促進されても、唾液そのものにはミュータンス菌の数を減少させる効果はありません。
また、糖アルコールにより歯垢中のカルシウムレベルが上がるので歯の再石灰化に役立ちます。
さらに、糖アルコールとカルシウムの複合体は歯の硬組織中に進入して再石灰化を促進し歯を硬くします。
一方、キシリトールだけが持つ作用ですがソルビトールやマルチトールなどの多くの糖アルコールは、少ない量ではありますが、口腔常在菌によって酸を作ります。
しかし、キシリトールは口腔常在菌が利用できないため、全く酸を作りません。
また、キシリトールには歯垢中に存在するショ糖を分解する酵素(シュクラーゼ)の活性を低下させ、歯垢中で酸ができにくくする作用に加え、アンモニア濃度を上げて酸の中和を促進する働きがあります。
ミュータンス菌への影響は非常にユニークで、この作用を理解するとキシリトールを使いやすくなると思います。
それについては、次に詳しく述べます。
キシリトールの上手な使い方
口腔の健康を保つ手段として最も重要なことが4つあります。
1.歯を磨く(ブラッシング)
2.フッ化物配合歯磨き剤を上手に使う(フッ化物の応用)
3.発酵性の食品が口に中にとどまる時間を短くする
(正しい食生活)
4.これらの手段がきちんと機能しているかチェックする
(定期的歯科健診)
これは子どもでも大人でも基本的に同じで、変わることはありません。
すなわち、手や顔を洗い、体の清潔を保つことと同じように、
▽歯の清潔を保つための基本であるブラッシング
▽歯を硬くしてむし歯になりにくくするためのフッ化物の応用▽体や精神の健康を守るための基本である正しい食生活
▽その効果判定のための歯科医院での定期的健診は、生涯を通じて行わなければならない大切なことと言えます。
それでは、キシリトールはこれらのどこに位置するのでしょうか。
キシリトールを使う(食べる、摂取する)ことは、前述の健康な歯を 守る方法に取って代わるものではありません。
ただし、キシリトールを常用することは、これらの手段の効果を著しく向上させます。
例えば、キシリトールは歯垢を剥がしやすくするためブラッシング効果を上げます。
フッ化物と一緒に使うことにより、歯を硬くする効果を向上させます。
また、キシリトール製品を利用して正しい食生活の教育もできます。
歯科医院ではキシリトール製品を使用したむし歯予防の説明とその効果判定が受けられます。
そのため、キシリトールを使ったむし歯予防法は、「追加型むし歯予防法」と呼ばれています。
歯の健康を守る手段を四葉のクローバー(それぞれの葉が歯の健康を守る重要な要素、茎がキシリトール)に見立てると、葉が大きくなるには茎がなくてはなりません。
しかし、葉がなくて茎だけでは大きくなりようがありません。
つまり、葉に描かれた「手段」の効果を大きくするためにキシリトールは使われるのです。
キシリトールの効果が期待できるお菓子は、ガムかタブレット(錠菓)に限られます。
これ以外のお菓子や食品、例えば、ケーキやジュース類にキシリトールが含まれていても、むし歯予防の効果は期待できません。なぜなら、ガムやタブレット以外でキシリトールが口の中に長くとどまるものがないからです。
また、これらのお菓子にはキシリトールができるだけ高濃度(50%以上)で含まれていることと、砂糖などの発酵性の甘味料が含まれていないことが必要です。
「シュガーレス」表示を確かめるかパッケージの成分表示をよく見て糖類が0gであることと糖質中における キシリトールの割合が50%を超えていることを確認してください。
むし歯予防効果を十分に発揮させるためには、高濃度キシリトール配合のガムかタブレットを1日3回3カ月以上続ける必要があります。
むし歯になりやすい方には、特に効果的と考えられます。
子どもへのミュータンス菌の感染を予防するためには歯が生える少なくとも3カ月前から保護者を始めとする子どもの 周囲にいる人達へのキシリトール使用が望まれます。
一番大切なのは・・・定期検診です。
虫歯になりにくいお口の環境を作っていきましょう!!