歯のコラム column
口腔機能低下症って知っていますか?お口の「わずかな衰え」を見逃さないために
2026.10.19
健康についてこんにちは。仙台市若林区新寺にある予防管理型歯科、ほんま歯科です。
「最近、食事中にむせることが増えた」
「硬いものを避け、柔らかいものばかり食べている」
「以前より滑舌が悪くなった気がする」
「食事に時間がかかるようになった」
「口が乾きやすく、食べ物を飲み込みにくい」
ご自身やご家族に、このような変化はありませんか?
年齢のせいだから仕方がないと思われやすい症状ですが、複数のお口の機能が低下する口腔機能低下症が関係している可能性があります。
口腔機能低下症は、早い段階で気づき、その人に合ったケアやトレーニングを始めることが大切です。
今回は、口腔機能低下症とはどのような状態なのか、歯科医院で行う7つの検査や全身の健康との関係について、仙台市若林区新寺のほんま歯科がわかりやすく解説します。
口腔機能低下症とは?
口腔機能低下症とは、加齢や病気、歯の喪失など、さまざまな原因によって、お口の機能が複合的に低下した状態です。具体的には、次のような働きが低下します。
· 食べ物を噛む
· 食べ物を口の中でまとめる
· 安全に飲み込む
· 舌や唇を動かして話す
· 唾液で口の中を潤す
· お口を清潔に保つ
口腔機能低下症は、単に歯が少ない、むし歯がある、歯周病があるというだけではありません。
歯や入れ歯の状態に加え、舌・唇・唾液・咀嚼・嚥下など、お口全体の働きを総合的に評価する病気です。
日本歯科医学会では、7つの下位症状を検査し、そのうち3項目以上に低下が認められた場合を口腔機能低下症としています。
オーラルフレイルと口腔機能低下症は何が違う?
似た言葉に「オーラルフレイル」があります。
オーラルフレイル
オーラルフレイルは、
· わずかなむせ
· 食べこぼし
· 滑舌の低下
· 噛みにくい食品の増加
· 口の乾燥
など、本人も見逃しやすい、ささいなお口の衰えを含む概念です。
健康な状態と、明らかな機能障害との中間に位置し、早めに気づいて対策することで、より健康な状態へ近づける可能性があります。
口腔機能低下症
一方、口腔機能低下症は、歯科医院で専用の検査を行い、基準値に基づいて診断する疾患名です。
つまり、日常生活で感じる小さな変化がオーラルフレイルのサインとなり、複数の機能低下が検査で確認された場合に、口腔機能低下症と診断されることがあります。
なぜ口腔機能低下症が注目されているの?
お口の機能は、食事だけでなく、栄養状態、筋力、会話、社会参加などにも関係しています。
噛みにくくなると、肉類や野菜、硬い食品を避けるようになり、柔らかい炭水化物中心の食事に偏ることがあります。
その結果、たんぱく質や必要な栄養素が不足し、低栄養や筋肉量の低下につながる可能性があります。
厚生労働省も、歯の喪失や咀嚼機能の低下が食生活に影響し、体重減少や低栄養と関連することを紹介しています。
さらに、滑舌の低下や食べこぼしを気にして人との食事や会話を避けるようになると、外出や社会交流の機会が減ることもあります。
このように、お口の衰えは、
口腔機能低下
↓
食べられる食品の減少
↓
低栄養・筋力低下
↓
身体的フレイル
という流れにつながる可能性があるため、健康寿命を守るうえでも重要視されています。
オーラルフレイルと要介護・死亡リスクの関係
地域で生活する高齢者を対象に行われた4年間の追跡研究では、複数の口腔機能の衰えが認められた人は、そうでない人と比べて、身体的フレイル、要介護認定、死亡などのリスクが高かったことが報告されています。
代表的な報告では、オーラルフレイルがある人は、健康なお口の状態の人と比較して、
· 身体的フレイルの発症リスク:約2.4倍
· サルコペニアの発症リスク:約2.1倍
· 要介護認定のリスク:約2.4倍
· 死亡リスク:約2.1倍
とされました。
ただし、これらは集団を追跡した研究結果であり、口腔機能が低下したすべての人が必ず要介護状態になるという意味ではありません。
大切なのは、ささいな変化を見逃さず、早めに検査や対策を始めることです。
口腔機能低下症を調べる7つの検査
歯科医院では、専用の機器や質問票を用いて7つの機能を確認します。
7項目のうち3項目以上に低下が認められた場合、口腔機能低下症と診断されます。
① 口腔衛生状態不良
舌の表面についている舌苔などを確認し、お口の清潔状態を評価します。
お口の中の細菌が増えると、むし歯や歯周病、口臭の原因になるだけでなく、飲み込む機能が低下している方では、誤嚥性肺炎にも注意が必要です。
主な対策
· 適切な歯磨き
· 歯間ブラシやデンタルフロス
· 入れ歯の清掃
· 舌を傷つけない範囲での舌ケア
· 歯科医院での定期的なクリーニング
② 口腔乾燥
専用機器などを用いて、お口の粘膜の湿潤状態を確認します。
唾液が少なくなると、
· 食べ物をまとめにくい
· 飲み込みにくい
· 口臭が気になる
· むし歯や歯周病が進みやすい
· 入れ歯が擦れて痛い
といった問題が起こりやすくなります。
口腔乾燥には、加齢だけでなく、服用している薬、糖尿病、脱水、口呼吸などが関係することもあります。
主な対策
· こまめな水分補給
· 唾液腺マッサージ
· 保湿ジェルなどの使用
· よく噛んで食べる
· 服用薬や全身疾患の確認
③ 咬合力低下
噛みしめたときに、どの程度の力がかかっているかを調べます。
専用の咬合力計などを使用する方法のほか、残っている歯の本数を参考に評価する場合もあります。
噛む力が低下する原因には、
· 歯の喪失
· 歯周病
· 合わない入れ歯
· 噛む筋肉の低下
· 痛みのある歯
などがあります。
主な対策
· むし歯や歯周病の治療
· 入れ歯の調整・作製
· 被せ物やブリッジの確認
· 噛む筋肉を使う訓練
· 食事内容の見直し
④ 舌口唇運動機能低下
「パ」「タ」「カ」を連続して発音し、1秒間に何回発音できるかを測定します。
この検査をオーラルディアドコキネシスといいます。
· パ:唇を閉じる動き
· タ:舌先を動かす力
· カ:舌の奥を動かす力
を確認できます。
舌や唇の動きが低下すると、滑舌が悪くなるだけでなく、食べ物を口の中で移動させたり、まとめたりすることが難しくなります。
主な対策
· パタカラ体操
· 唇や頬の運動
· 舌を左右・上下に動かす体操
· 会話や音読
⑤ 低舌圧
舌圧とは、舌を上あごへ押しつける力です。
検査では、小さな風船のようなセンサーを口に入れ、舌と上あごで押しつぶしてもらいます。
舌圧が低下すると、
· 食べ物を口の中でまとめにくい
· 喉の奥へ送り込みにくい
· 食事時間が長くなる
· 食べ物が口の中に残りやすい
などの変化が起こることがあります。
主な対策
· 舌を上あごへ押しつける運動
· 舌の抵抗訓練
· 舌を前後・左右に動かす体操
· 食形態や一口量の調整
⑥ 咀嚼機能低下
咀嚼機能検査では、検査用のグミなどを一定回数噛み、食べ物をどの程度細かくできるかを測定します。
咀嚼機能が低下すると、硬いものや繊維質の食品を避けるようになり、食事の内容が偏りやすくなります。
「消化不良になる」と単純に決まるわけではありませんが、食べられる食品の種類が減ることで、低栄養につながる可能性があります。
主な対策
· 歯や入れ歯の治療・調整
· 左右両方で噛む練習
· 食材の硬さや大きさの調整
· 管理栄養士などとの連携
⑦ 嚥下機能低下
質問票などを使い、食べ物や水分を安全に飲み込めているかを確認します。
次のような症状がある場合は注意が必要です。
· 食事中によくむせる
· 水やお茶で咳き込む
· 食後に声がかすれる
· 食事に時間がかかる
· 食べ物が喉に残る感じがする
· 発熱や肺炎を繰り返す
主な対策
· 姿勢や一口量の調整
· 飲み込みの訓練
· 食べ物の硬さやとろみの調整
· 医師・言語聴覚士・管理栄養士との連携
むせや発熱を繰り返す場合は、歯科だけでなく医科での詳しい検査が必要になることがあります。
口腔機能低下症は改善できますか?
口腔機能低下症では、早期に原因を確認し、必要な治療や訓練を行うことで、機能の維持や改善を目指すことができます。ただし、すべての人が完全に元の状態へ戻ると断定できる病気ではありません。
年齢、持病、歯の本数、入れ歯の状態、服用薬、栄養状態などによって、改善の程度には個人差があります。
大切なのは、7つの検査結果から、その方の弱くなっている機能を見つけ、必要な対策を組み合わせることです。
歯科医院で行う主な口腔機能管理
検査結果に応じて、次のような管理を行います。
· 歯磨き・舌ケア・入れ歯清掃の指導
· 歯科医院でのクリーニング
· 唾液腺マッサージや保湿ケア
· パタカラ体操などの舌口唇訓練
· 舌圧を高めるトレーニング
· むし歯や歯周病の治療
· 入れ歯や噛み合わせの調整
· 食事内容や食べ方の助言
· 定期的な再検査
一定期間取り組んだ後は、再検査を行い、数値の変化を確認します。感覚だけでなく、客観的な数値を比較できることが、口腔機能精密検査の大きなメリットです。
糖尿病や全身疾患がある方こそお口の確認を
高齢化が進む現在、口腔機能低下症への対応では、歯科だけでなく医科や介護職との連携が重要になっています。
特に糖尿病がある方では、歯周病が悪化しやすく、口腔乾燥を伴うこともあります。
さらに、噛みにくさから食事が炭水化物中心に偏ると、血糖管理や栄養状態に影響する可能性があります。
そのため、必要に応じて、
· 内科医
· 耳鼻咽喉科医
· 言語聴覚士
· 管理栄養士
· ケアマネジャー
· 介護スタッフ
などと連携し、お口と全身を一緒に支えることが大切です。
口腔機能低下症の検査は保険で受けられますか?
口腔機能低下症に対する保険診療上の検査や管理は、原則として50歳以上の方が対象です。
2018年度に65歳以上を対象として導入され、その後、2020年度の診療報酬改定で対象年齢が50歳以上へ拡大されました。
ただし、50歳以上であれば全員が自動的にすべての検査を保険で受けられるわけではありません。
症状、歯や入れ歯の状態、診断内容などによって異なりますので、受診時に歯科医師へご確認ください。
よくある質問(Q&A)
Q. むせることがあれば、口腔機能低下症ですか?
A. むせがあるだけで口腔機能低下症とは診断されません。7項目の検査を行い、3項目以上に低下が認められた場合に診断されます。
Q. 痛みのある検査ですか?
A. 基本的には強い痛みを伴う検査ではありません。発音、舌圧、咀嚼、口の乾燥などを専用機器や質問票で確認します。
Q. 歯が多く残っていても検査は必要ですか?
A. はい。歯が残っていても、舌や唇、唾液、咀嚼、嚥下などの機能が低下していることがあります。歯の本数だけでは判断できません。
Q. 入れ歯を使っていても検査できますか?
A. はい。入れ歯を使用している方も検査できます。入れ歯が合っているか、しっかり噛めているかも含めて確認します。
Q. 一度検査すれば終わりですか?
A. 口腔機能は、体調や加齢、歯の状態によって変化します。初回検査後も、管理やトレーニングを行い、定期的に再評価することが大切です。
Q. 自宅で体操をすれば検査を受けなくても大丈夫ですか?
A. 体操は予防の一つですが、噛みにくさの原因が歯や入れ歯にある場合や、嚥下障害がある場合は、体操だけでは対応できません。まず検査で原因を確認することをおすすめします。
まとめ|「年齢のせい」と諦める前に検査を受けましょう
口腔機能低下症は、噛む、飲み込む、話す、口を清潔に保つといった複数のお口の機能が低下した状態です。
初期には、
· 少しむせる
· 食べこぼす
· 口が乾く
· 滑舌が悪くなる
· 硬いものを避ける
· 食事に時間がかかる
といった、ささいな変化として現れます。
口腔機能の低下は、低栄養や身体的フレイル、社会参加の減少などにつながる可能性があります。
一方で、早めに気づき、歯や入れ歯の治療、口腔ケア、トレーニング、食生活の見直しを行うことで、機能の維持や改善を目指すことができます。
仙台市若林区新寺の予防管理型歯科、ほんま歯科では、専用機器を用いた口腔機能精密検査と、一人ひとりの結果に合わせた継続管理を行っています。
「最近むせやすい」
「食べられるものが減ってきた」
「口の乾燥や滑舌が気になる」
「家族のお口の衰えを調べたい」
という方は、年齢のせいと諦めず、定期検診の際にお気軽にご相談ください。
いつまでもご自身のお口でおいしく食べ、楽しく話し、健康に生活できるよう、ほんま歯科がサポートいたします。
【歯科医師・歯科衛生士監修】